「ガイアの夜明け【マイナンバー狂騒曲!】」特集記事
マイナンバーカードが切り拓く新時代 - 2025年本格運用の実態と課題
2016年1月に交付が始まったマイナンバーカードが、2025年に入りついに本格運用の段階を迎えました。国民の取得率78%(2025年2月末時点)という高い普及率を背景に、私たちの生活や経済活動に大きな変革をもたらそうとしています。しかし、その道のりは決して平坦ではありません。「マイナンバー狂騒曲」と題されたガイアの夜明けの特集では、この一大国家プロジェクトの最前線に迫ります。
第1章:マイナンバーカードの現状と2025年問題
マイナンバーカードの普及状況
2025年2月末時点でのマイナンバーカード保有枚数は9737万3965枚、保有率は78%に達しています。これは政府が掲げた「ほぼすべての国民に交付する」という目標には届いていないものの、マイナポイント事業などの普及促進策により、大きく普及が進んだ結果です。
2025年問題とは
2025年に入り、マイナンバーカードは「2025年問題」と呼ばれる大きな課題に直面しています。2020年9月~2023年9月の「マイナポイント事業」実施期間に発行されたカードの電子証明書が、2025年から一斉に有効期限を迎えるのです。更新が必要となるカードは1500万枚を超え、2026年度以降は約3000万枚に急増する見込みです。
電子証明書は、マイナンバーカードに内蔵されたICチップ内に格納されている公的個人認証サービス(JPKI)で、原則として発行日以降の5回目の誕生日までが有効期限となっています。この電子証明書が失効すると、e-Taxなどの電子申請やコンビニ交付、マイナ保険証などのサービスが使えなくなる恐れがあります。
しかし、調査によると、マイナンバーカードと電子証明書のそれぞれに有効期限があることを知っている人は全体の48.6%と半数以下にとどまっており、多くの国民が更新の必要性を理解していないという問題があります。
第2章:2025年から始まる本格運用の新サービス
マイナ保険証の本格稼働
2024年12月2日をもって新たな健康保険証の発行は終了し、原則としてマイナンバーカードを保険証として使用することになりました。2025年1月末時点でマイナ保険証の利用登録件数は8153万件に達しています。
マイナ保険証の活用により、患者本人の健康・医療に関するデータに基づいた医療を受けることが可能となり、重複投薬の防止や過去の健診データの活用など、様々なメリットが期待されています。
マイナ救急の導入
2025年秋には、マイナ保険証を全国で救急搬送に活用する「マイナ救急」が本格導入される予定です。これにより、救急隊員がカードリーダーで傷病者のマイナ保険証を読み取ることで、既往歴や服薬情報などを把握し、適切な病院選定や迅速な治療につなげることが可能になります。
総務省消防庁は「マイナ救急」の取り組みを進めており、救急業務の円滑化と救命率の向上が期待されています。
マイナ免許証のスタート
2025年3月24日からは、マイナンバーカードと運転免許証を一体化させた「マイナ免許証」の運用が開始されました。これにより、免許証の更新手続きの簡素化や、スマートフォンでの資格確認が可能になるなど、利便性が向上しています。
マイナ免許証は、従来のような免許証のみを保有することもできますし、マイナ免許証のみを選ぶこともできる3タイプから選択可能です。ただし、マイナンバーカードを紛失した場合は再発行に1週間程度かかり、その後改めて警察署などで免許証と一体化する手続きが必要となります。
第3章:マイナンバーカードをめぐるトラブルと課題
個人情報の紐づけ間違いによるトラブル
マイナンバーカードの普及に伴い、個人情報の紐づけ間違いによるトラブルが発生しています。特に「マイナ保険証」では、ヒューマンエラーで別人の情報が紐づけられるケースが報告されており、2023年時点で7300件余りのミスが確認されています。
また、国の給付金などを受け取る公金受取口座が、家族ではない無関係な別の人の口座に登録されるなどのトラブルも発生しています。これらの問題は、マイナンバー制度の信頼を根本から揺るがす重大な課題となっています。
セキュリティ上の懸念
マイナンバーカードには個人情報が紐づけられているため、情報流出のリスクに対する懸念も根強く存在します。2024年には偽造マイナンバーカードを使ったとみられる手口でスマートフォンの「乗っ取り」被害も報告されており、セキュリティ対策の強化が求められています。
ただし、マイナンバー制度では個人情報が一元管理されているわけではないため、マイナンバーから個人情報が芋づる式に漏れることはないとされています。また、マイナンバーを利用する手続きでは、本人確認が厳格に行われる仕組みになっています。
不正勧誘への警戒
マイナンバー制度に便乗した不正な勧誘や個人情報の詐取も懸念されています。総務省は、不審な電話やメールはすぐに切る又は無視し、マイナンバー総合フリーダイヤルや消費者ホットラインに連絡・相談するよう呼びかけています。
第4章:マイナンバーカードがもたらす恩恵と未来
行政手続きのデジタル化と効率化
マイナンバーカードの本格運用により、行政手続きのデジタル化と効率化が進むことが期待されています。例えば、公金受取口座の登録により、緊急時の給付金、年金、児童手当、所得税の還付金等の支給手続きが簡素化され、申請書への口座情報の記載や通帳の写しの添付等が不要になります。
医療の質の向上
マイナ保険証の活用により、医療機関間での情報共有が進み、重複検査や投薬の防止、過去の診療情報の活用による適切な医療の提供が可能になります。また、マイナ救急の導入により、救急搬送時の迅速かつ適切な対応が期待されています。
デジタル社会の基盤整備
マイナンバーカードは、デジタル社会の基盤として、様々なサービスとの連携が進んでいます。オンラインでの本人確認や電子署名が可能になることで、行政サービスだけでなく、民間サービスの利便性も向上することが期待されています。
第5章:現場の最前線 - 対応に奮闘する人々
自治体窓口の対応
マイナンバーカードの電子証明書の更新手続きは、自治体窓口で行う必要があります。2025年から更新が必要なカードが急増することで、窓口の混雑が予想されており、自治体職員は対応に追われています。
医療機関の取り組み
マイナ保険証の本格運用に伴い、医療機関ではカードリーダーの導入や、システム対応、スタッフの教育など、様々な準備が進められています。特に小規模な診療所などでは、新たな設備投資や業務変更への対応に苦慮するケースもあります。
救急現場での活用
救急隊員は、マイナ救急の導入に向けて、カードリーダーの操作訓練や、取得した情報の活用方法の習得など、新たなスキルの獲得に取り組んでいます。限られた時間の中で効果的に情報を活用し、救命率の向上につなげるための努力が続いています。
結論:デジタル時代の新たな挑戦
マイナンバーカードは、2025年の本格運用を迎え、私たちの生活や経済活動に大きな変革をもたらそうとしています。マイナ保険証、マイナ救急、マイナ免許証など、様々なサービスとの連携により、行政手続きの効率化や医療の質の向上、デジタル社会の基盤整備が進むことが期待されています。
しかし、その一方で、個人情報の紐づけ間違いやセキュリティ上の懸念、不正勧誘への警戒など、様々な課題も存在します。特に2025年から電子証明書の更新が必要なカードが急増する「2025年問題」は、制度の信頼性を左右する重要な局面となります。
マイナンバーカードが真に私たちの生活を豊かにするツールとなるためには、制度の安全性と信頼性を確保しつつ、利便性を高めていくことが不可欠です。そのためには、行政、医療機関、企業、そして私たち一人ひとりが、デジタル時代の新たな挑戦に向き合い、共に歩んでいくことが求められています。
「ガイアの夜明け【マイナンバー狂騒曲!】」では、このような時代の転換点に立つマイナンバーカードの現状と課題、そして未来への展望を、最前線で奮闘する人々の姿を通して描き出します。