「Dearにっぽん」特集予告 — ふたりの大堀相馬焼:故郷に戻る窯元と避難先で続ける技(8月10日 日曜 8:25〜)
NHKのドキュメンタリー番組 「Dearにっぽん 選『ふたりの大堀相馬焼〜福島・浪江町〜』』」 は、300年超の伝統を持つ 大堀相馬焼(おおぼりそうまやき) をめぐる「ふたり」の物語を丁寧に追う。誰も住んでいない故郷に工房を再建する父と、避難先で器づくりを続ける息子――伝統とは何か、産地の“いま”と“これから”を知りたい人にとって必見の回だ。放送は8月10日(日)8:25〜8:50、語りはアーティストの milet(ミレイ) が務める。
大堀相馬焼とは?――300年以上の伝統と「三つの個性」
大堀相馬焼は浪江町大堀地区で生まれ、江戸時代の元禄年間から続く伝統工芸で、現在は国の伝統的工芸品に指定される。代表的な技術・意匠は次の三つだ:
-
走り駒(はしりごま)──躍動感ある馬の絵付けで、相馬地方の「御神馬」に由来する縁起絵。
-
青ひび(あおひび)──青磁釉に生じる細かな貫入(ひび模様)が全体に広がる独特の景色。
-
二重焼き(二重構造)──器が二重になって湯が冷めにくく、持っても熱くなりにくい独自の機能性。
使いやすさと美を同居させた器づくりが長く愛される理由であり、番組はこれらの技法がどのように次世代へ引き継がれているかを描く。
ふたりの主役:近藤学さん(父)と賢さん(息子)の「選び方」
-
近藤 学(こんどう まなぶ)さん:大堀地区の窯元を代表する職人の一人で、故郷に工房を再建する決意を固める。ドキュメントは近藤さんが「伝統は大堀にある」と語り、産地再興を見据えて故郷で動く姿を追う。いまは地元に新たにオープンする拠点(今年6月オープンの店舗)へ向けて準備を進める場面が中心になる。
-
近藤 賢(けん)さん:学さんの後継ぎであり、避難先(番組は避難先での制作活動を追う)で家族の生活と制作を両立させる難しさを抱える。賢さんは「家族の生活を変えられない」と言いながら、離れた場所で大堀の技法を自分なりに表現する方法を模索する。その姿が「伝統をどう繋ぐか」の核心を示す。
※近藤さん親子は、震災以降にいわき市等で工房を再開している窯元のひとつで、いわきに新工房をオープンする案内をしている。訪ねたい人は工房の公式ページで見学情報を確認するとよい。
なぜ「いま」語るのか――避難指示解除と産地再生の潮流
-
2011年の東日本大震災と原発事故で大堀地区は避難指示区域になり、窯元の多くが避難先へ移る。
-
令和5年(2023年)3月31日に浪江町の一部(特定復興再生拠点区域)で避難指示が解除され、大堀地区の施設や一部窯元の拠点が段階的に再開する流れが生じる。いまは「産地をどう再生するか」「暮らしをどう取り戻すか」を具体的に取り組む局面にあり、番組はその現場に焦点を当てる。
番組で注目したいシーン(見るポイント)
-
父が故郷に再建する工房の風景:大堀の土と窯、走り駒の絵付けや二重焼きの工程が画面で理解しやすく示される。道具や釉薬、窯出しの瞬間に注目すると技法のリアリティが伝わる。
-
息子が避難先で作る“変奏”:伝統の枠組みを守りつつ、避難先の生活圏でどのように表現を変えるか。家族の事情と創作の両立が作品にどう影響するかを見る。
-
「陶芸の杜おおぼり」や新店舗の動き:地域の拠点施設や6月オープンの店舗が産地再生の拠点役割を果たす様子を確認すると、復興の実像がわかる。陶芸の杜の開館日時や展示情報は町の案内を参照する。
観光・購入・体験ガイド(現地へ行きたい人向け)
-
陶芸の杜 おおぼり(浪江町):大堀相馬焼の歴史を伝える施設で、展示・解説や陶芸体験(要予約)を案内する。開館日は金曜〜月曜、開館時間は10:00〜15:00(最終入館 14:30)なので訪問計画は公式案内を確認する。
-
工房訪問・購入:窯元の多くは避難先(福島県内のいわき市など)で制作・販売を続けるケースがある。近藤学さんの工房(陶吉郎窯)はいわき市に工房案内を出しており、見学や購入は事前連絡で調整すると確実だ。
-
アクセスの目安:浪江町はJR常磐線の復旧区間や自動車利用でアクセスする。町の公式サイトに復興に伴う交通案内や住民情報がまとまるので、最新の交通状況と訪問ルールを確認することを推奨する。
伝統工芸の「いま」をどう受け取るか――番組が投げかける問い
-
「伝統は場所にあるのか、それとも人にあるのか?」――父は“伝統は大堀にある”と語り、産地での継承を重視する。息子は避難先での生活と家族を優先しながら独自の継承を模索する。視聴者はどちらの選び方に共感するか、自分の価値観で考えることができる。
放送情報
-
番組名:NHK 総合「Dearにっぽん 選『ふたりの大堀相馬焼〜福島・浪江町〜』』」
-
放送日時:8月10日(日)8:25〜8:50(NHK総合1・東京)
-
語り:milet(ミレイ)。